ラトー西峰 Râteau ouest (3769m)


7月19日 晴れ

エクラン山群の主峰メイジュ(3983m)の西に鎮座するこの山は、独立孤高というよりも雄大な尾根といった感じです。そのせいかエクラン山群に見られる鋭峻な針峰と違い、ドッシリと登山者を受け入れてくれるような印象がします。
この山群では最も大きなジローズの氷河を渡りコルに取り付き、そこからは尾根伝いに登攀する北ルートで登ります。


出発地点標高 テレキャビン終点駅 3211m
到着地点標高 ラトー西峰 3769m
セルの山小屋 2673m
標高差 登り テレキャビン終点駅〜ラトー西峰 558m、
下り ラトー西峰〜セルの山小屋 1069m
所要時間 登り 4時間50分、下り 4時間
道具 ピッケル、ヘルメット、アイゼン、ザイル、ハーネス、アイススクリュー、カラビナ、ヌンチャク、スリング
地図 IGN 3436 ET




実はこの日の前日にシャンセルの山小屋(2506m)に泊まってそこから登頂する予定だったのだが、あいにく大雨と雷であったため、小屋に登るのをあきらめて、この日朝ラ・グラーブという町からテレキャビンを使って一気に登り標高を稼いだ。
前日は雨だったせいかこの朝もまだ雲がかなり残ってはいたが、空気は澄みきっていた。標高2800m位から上は雪が降った模様。

テレキャビンに乗り込む
麓から見上げると山は雲に包まれている
終着駅からみたジローズ氷河
雪が降ったためクレバスが隠されている
少し雪上を歩きテレキャビン終着駅を振り返える
その向こうは雲海

10時、終着駅から少し歩いたところでアイゼン装着、アブザイレンする。今回のメンバーは私以外屈強な男衆5人。その中でも一番小さな男性とアブザイレン。そうでないとスリップしたときに止められないよ。
雪が降ったせいでクレバスが隠されてしまっていた。歩く道すがらピッケルで何度も上から突き刺しながら歩く。降雪はそんなに多くなかったらしく、刺したピッケルもだいたい30cmほどでその下の固い氷に当たる。底なしにもぐったらそれこそ注意、ヒドゥン・クレバス、穴のあいたクレバスが隠れているということだ。

ものすごい快晴だが結構気温は低かったと思う。

赤が私たちが取ったルート(点線はドームの向こう側を通ったということ)
青いルートで登っている人もいた

この氷河を「突き刺し歩き」していたので結構時間をくってしまった。いよいよ傾斜の登りに入ったので、少しスピードを上げる。
雪は少し柔らかめだから、これは午後にはグサグサになるかも。私たちの前にもザイルパーティがいくつか見える。この辺りは落石の危険もあるので立ち止まることはできない。たまにどこからかゴロゴロッという音が反響していた。
傾斜を登り終えるとジローズのコル3514mに着く。ここからはコルの南側の展望が開ける。エクランも見えるはずだ。
ここのコルで、持ってきていた4日分の食料をデポする。
これが1人前結構な量でした!パン1斤、チーズ、サラミ・ハム類、フルーツ、タッパに入ったサラダ、行動食 etc。アイゼン履いているし、ザイルもつないでいるし、ザックが一段と軽くなった。

最初の登りにさしかかる
写真だとあまり急斜に見えないなぁ
登ってきたところを振り返る
コルに到着
コルから南側を望む
中央上がエクラン4102m

雲はあるものの、すばらしい360度の眺望だ。こういう風景を見ると疲れもふっとぶというもの。山また山が連なる風景は圧巻!山登りをしない人はこういった風景を見れないわけで、それは少し人生損してるなぁ、なんて自己満足に浸るのでした。
コルからまた少し登ったところでアイゼンをはずし、ピッケルとともにデポする。

ここからはいよいよ登攀の開始。どんな岩が待っているのかワクワクする。標高差にしてラスト200m。

先ずはこんな感じの岩場を登る
雪が付いているためスリップしないように注意
実はこれは山頂ではありません
これを越えてトラバースすると・・・
またさらに登攀
ここで他のパーティーが登攀していたのでちょっと待たされた
雪は付いてないものの、岩は濡れていて滑る
ホールドはあるが結構斜度がある
この日はここのワンピッチが一番手こずらされた





ふと上を見てもさらに高い岩がない。山頂だ。2時50分。結局5時間弱もかかってしまった。氷河を渡るのに時間がかかったり、他のパーティーの順番待ちをしていたからか。
やはり雲が多いものの、北側にモン・ブランが雲を突き抜けてその山頂を見せていた。感動!

時間も時間だし山頂ではゆっくりしている時間もなかった。手早く山頂からの写真を撮り、早速下山にかかる。

山頂で記念撮影
山頂から
右、ラトー東峰は3809m
明日登攀予定
先ほどコルから見えたジャンダルム
これを越えてトラバースしました
山頂に腰掛けてますが、南側は切れ落ちてます
山頂から続く稜線
ジローズ氷河が真っ白

下りは先ほどのコルまで降りて、先ずアイゼンとピッケルを回収、次に命綱の食糧を掘り起こし回収。雪中に埋めておいたので天然冷蔵庫状態。
ところがここのコルまで来たときにどうも調子が悪くなってきた。この時は多分昼食を取らずに登攀してたため、空腹のせいでちょっと気分が悪いのだろうくらいにしか思わなかった。だが実際に空腹感はなかった。それほど標高も高いわけでもないし、高山病の類とは思えない。まあ後は下るだけだしそのうち良くなるだろうと思った。
ところがこの下り、予想したとおり雪はグサグサで、1歩1歩が80cmはずり落ちる。腿、膝がピクピク笑ってた。

ずり落ちてきました

今朝出発した3270m地点まで降りてきて、今度はさらに違うローズのコル3512mに向かって登り出す。このあたりではっきりと調子が悪いのが顕著に現れた。このたかが300mの登り、しかも目の前にコルは見えているのだが、まったく気分が悪くて足が前に出ない。やはり高山病かなぁと思う。でも登攀中は何でもなかったしなぁ・・・。ザイルのトップを代わってもらい、なんとなく引っ張られるかたちでようやくローズのコルに着く。。

ローズのコルにある池、半分氷ってた
ここから標高差1000m下の谷底に今夜泊まる山小屋がある

苦しい体に鞭打って下り始める。が、この下りも手ごわかった!砂利と小石と岩が混ざった砂礫で、急斜面とあってブレーキが利かない。これって富士山の有名な砂走り(でしたっけ?)のようなもの?と思いながらまるで登山靴でスキーをするように下る。しかもカミソリのような薄い層が重なって岩になっているアルドワーズという岩盤で形成されているため、もしバランス崩して手でも着こうものならたちまち切れてしまう。
ようやくこのガレ場から開放されて普通の岩場になったとたん、ものすごい吐き気に見舞われた。もちろん胃の中には何にも無いから吐く物もない。が、嘔吐を繰り返す。
夕方7時、這うように歩きようやく小屋に着き、なだれ込むようにベットに横になった。胃が痛くて動けなかった。男衆も「食中毒か?」と心配してくれたが、ピントずれずれ、何にも食べてないじゃん!
どうやらこれはトイレを我慢したしたせいで水を飲まず、しかも食わずで軽い脱水症状らしい。そういえば行動食も取らなかったっけ。夕食を食べることももちろんできない。1時間かけて水を少しずつ少しずつ飲む。こういうときは無理してでも胃に何かを入れたほうがいいらしい。山小屋の管理人さんがにんじんスープとご飯を用意してくれたのでそれを流し込む。よかった、更には吐かなかった。がまだ胃はキリキリする。
そのまままたベットに横になる。とりあえず眠りたい。明日はどうなるのかなぁ、と考えたが、明日の心配は明日しよう。遠くに誰かのいびきを聞きながら眠りに落ちた。



 





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